おりものの役割
「おりもの」とは、膣や子宮、汗腺から出された分泌物です。健康な状態のおりものは、女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、膣内は酸性となり、潤いを保ちながら、大腸菌やカンジダ真菌などの雑菌の繁殖を抑えるよう働きます。これは、「膣の自浄作用」と呼ばれており、おりものの中にある「デーデルライン桿菌(かんきん)」という善玉の乳酸菌の働きによるものだとされています。
しかし、何らかの理由で乳酸菌の量が少なくなると、膣内の自浄作用力が落ちてしまい、感染症を引き起こしやすくなります。
おりものとエストロゲン
女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量に比例して、おりものの分泌量は変化します。エストロゲンは排卵期(月経周期の中間期)になると分泌量が多くなり、おりものの量も比例して増加します。排卵期に排出されるおりものは、卵の白身みたいで粘り気(ねばねば、びよーん)があるのが特徴です。また、妊娠中もエストロゲンの分泌量が増えるので、おりものの量も一緒に増えます。
女性ホルモンの分泌量が低下する更年期になると、おりものの分泌量が減る傾向にあります。個人によって若干異なりますが、40代になるとおりものの分泌量は徐々に減少しはじめ、閉経すると激減します。
おりものから分かる病気のサイン
色がついているおりもの
以下に当てはまっているおりものが見られる場合は、何らかの疾患が疑われます。
おりものの色・状態 | その他症状 | 可能性のある疾患 |
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ピンク・赤・茶・黒(おりものに血が混じっている) | ||
白くてポロポロしている、酒粕っぽく見える |
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白くて量が多い |
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均一な灰白色で魚臭い |
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量が多くて黄緑色 腐ったような臭い 泡状 |
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量が多くて泡状の黄緑色腐ったような臭い |
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量が多い、水っぽい |
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黄色で量が多い |
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上記は典型的なおりものの見た目と症状であり、当てはまらない例も実際には多くあります。
おりものの量が多い
量が多くても、色やにおいの異常、外陰部のかゆみが見られない場合は、「子宮腟部びらん」が疑われます。子宮腟部びらんは、閉経前の成人女性の8割~9割に現れるものなので、特に気にする必要はありません。ただし、おりものの量があまりにも多すぎる、あるいは何度も出血がみられる場合は、当院までご相談ください。
特に、おりものがほとんど分泌されない年代の方(思春期前)や、閉経後の方の場合、急におりもの分泌量が増えた場合は、何らかの異常が考えられるので当院へご相談ください。
おりものに臭いがある
人によって嗅覚の度合いが異なるので、においに異常がないかを確認するのは難しいかと思います。しかし、「においがいつもと違う」、「臭いが酷くなった」場合は、何らかの疾患の疑いがあります。
また、腐敗臭がする場合は、タンポンやコンドームなどが膣内で残っていることによる、雑菌の繁殖が原因であることもあります。悪臭以外にも、おりものの色の異常や、外陰部のかゆみ・痛みなどがみられる場合は、性感染症などの疑いがあります。中でもおりものの異常は、性感染症が原因で発症しているケースも多いです。
おりものは、月経(生理)周期や体調によって、色や量などが変わります。健康時のおりものと比較することで、おりものの異常がないか確認しましょう。
性器カンジダ症
カンジダとは真菌(カビ)の一種です。膣や外陰部にも普段から認められることがある常在菌ですが、身体の抵抗力が低下した(疲れが溜まっている)時、または抗生物質を服用している時に異常の増殖し、発症しやすい感染症です。陰部のかゆみや、ヒリヒリ感、おりものが増えるなどの症状が現れます。
おりものは白く濁っていて、ポロポロしていることが多いです。カッテージチーズやヨーグルトとよく似ています。性行為により感染が行ったり来たりする(ピンポン感染)こともあり、性感染症という側面もあります。
治療は投薬治療が中心で、抗生物質である膣錠や軟膏を処方します。
細菌性腟症・細菌性腟炎
細菌性腟症とは、膣の中の乳酸桿菌という乳酸菌をメインとして常在菌のバランスが崩れ、あらゆる菌(嫌気性菌など)に置き換わってしまった状態です。その結果、炎症が見られると細菌性腟炎と呼ばれます。
精神的、身体的ストレスや疲労により、抵抗力が低下した状態で起きやすいです。
症状は、おりもの(灰色、サラサラ)が増えることや、外陰部あたりが臭う(生臭い感じ)などですが、まれに下腹部痛や不正出血をきたすこともあります。
治療は、膣腟内を洗浄し、抗生物質の膣腟剤や内服薬を処方します。