流産絨毛
(products of conception: POC)
染色体とは、ヒトの”設計図”を表しているとイメージして頂けると、分かりやすいかもしれません。流産した胎児(赤ちゃん)に染色体異常がなかったかどうかは、流産絨毛染色体(POC)検査で調べることができます。POC検査とは、流産した胎児の絨毛(じゅうもう:赤ちゃんになる細胞)組織を、4週間程度培養して得た染色体を染色して調べる検査です。
一般的に、流産は妊娠の約15%に起き、その中の約8割は胎児に染色体異常が起きていると報告されています。3回流産(習慣流産)を繰り返した方の約50%の方は、赤ちゃんの染色体異常が流産の原因である可能性が考えられます。
POC検査を行う目的は主に、流産の原因が胎児の染色体異常によるものなのかどうかを確認することです。POC検査に異常を認めなかった場合、流産の原因がお母さん側にある可能性を疑うことになります。
IUFD(intrauterine fetal death:子宮内胎児死亡)で採取される絨毛ですが、胎児の心停止後の子宮内滞在時間が短いほど、染色体を獲得できる可能性が高まります。また、経腟的に絨毛の採取を行うので細菌の汚染リスクが高く、まずは培養を行って細胞の状態を確認しないと、染色体検査ができるかどうかが分かりません。
また、このPOC検査で全ての赤ちゃんの染色体の異常が分かるわけではなく、さらに精密な検査が必要な場合があります。そしてこの検査から、予期せず、両親(カップル)の染色体に異常があることが分かってしまうことがあります。当院では、遺伝医学に精通した「臨床遺伝専門医」、「認定遺伝カウンセラー」による遺伝カウンセリングで、可能な限り詳しくご説明していきたいと考えております。
POCの結果から分かること
染色体が正常だった場合
母体側の問題による流産が一つの原因として考えられます。その場合は、母体側の問題を調べる検査(不育症検査など)を行う必要がある場合があります。一方、すでに不育症スクリーニング検査を行い治療方針が決定している方は、現在行っている治療で問題ないのか?などの振り返りができる場合があります。
染色体の数に異常があった場合
胎児の染色体異常による流産が考えられます。そのため、母体側の原因を調べる検査を行う優先順位は低く、行う必要がない場合が多いです。
染色体の数は正常だが、形または構造に異常がみられた場合
男性もしくは女性(またはお二人)に、染色体のわずかな構造異常があるかもしれません。ご自身が病気になったりする可能性は低く、妊娠に影響がない染色体異常もありますが、今後の妊娠においても流産が続く可能性がある場合もあります。
まずはお二人で一緒に染色体検査を受けていただき、流産を繰り返しやすいタイプか否かを調べていきます。
どちらかに、わずかな染色体の構造異常が見られた場合は、遺伝カウンセリングを受けていただきます。また、お二人に異常が見られず、かつ胎児の染色体の構造異常が偶然起きたかもしれない場合は、次の妊娠で流産が起きる可能性は低くなります。