精子凍結について
採卵当日、体外受精または顕微授精に使用する精子を何らかの事情で当日採取できない場合に、あらかじめ精子を凍結保存することが可能です。
- 採卵当日、夫(パートナー)の都合がつかない(持参も困難)
- 精子の数が少ないので、採卵当日の精子を利用しての体外受精が出来ない可能性がある
- 無精子症に対してTESE(精巣内精子採取術)を行い、精子が獲得できた
精子凍結の方法
01 院内またはご自宅にて精液を採取する
可能であれば3日前後の禁欲期間をおもちください。
精液を持参される際の注意点
- 採精容器(カップ)は当院がお渡しするものをご使用ください。
- 採取から2時間前後以内に持参ください。
- 室温程度で持参し、カイロや保冷材は使用しないでください。
02 精液検査をする
精液量や精液の濃度、精子の運動率など、精子の状態を検査します。
03 遠心・洗浄
運動精子を遠心・洗浄し、凍結処理を行い、専用の凍結用チューブ内に凍結します。
04 凍結保存
凍結処理をした精子を液体窒素(-196℃)の中で保存します。
物理的には半永久的に保存可能です。
- 当日精液採取・提出後、検査結果判明まで1時間かかります。
- 精液中に精子が認められない、または極端に所見不良である場合、精子凍結ができないことがあります。
凍結精子を用いた治療について
凍結融解後の精子は生存率(運動率)が低下することがあるため、凍結精子を使用する場合は顕微授精を行います。凍結精子を使用して顕微授精を行った場合、凍結前の精液所見が極端に悪い場合などを除いて、治療成績にはほとんど影響はありません。また、この方法で出生した児に何らかの影響を及ぼしたとの報告は、現在のところありません。
注意事項
- 精子の凍結・融解使用には、説明を受け、同意書のご提出が必要です。
- 精子凍結にはご予約が必要であるほか、事前に感染症検査が済んでおり、結果が判明していることが必要です。
- 精子凍結をご希望の場合は、できるだけ早めに医師・スタッフにご相談ください。
卵子(未受精卵)凍結
卵子(未受精卵)凍結とは
将来の妊娠・体外受精に備えて、若いうちに自身の卵子を採取し、凍結保存することです。
卵子凍結は、がん治療などで妊娠できない状況にある場合や、仕事の都合やパートナーがいないなどの理由からすぐには妊娠が望めないが、加齢による妊娠力の低下を回避したい場合などに行われます。
卵子凍結の対象となる方
- 抗がん剤治療等により卵巣機能の低下が予想される方(医学的適応)
- 将来的な妊娠に備えて卵子を残したい方(社会的適応)
凍結時期
採卵できた卵子は、GV、MⅠ、MⅡのいずれかの時期にありますが、基本的には成熟卵であるMⅡにある卵子を凍結します。
GV(未成熟卵)
MⅠ(未受精卵)
MⅡ(成熟卵)
凍結方法
卵子の凍結は超急速ガラス化法にて凍結されます。
卵子の細胞内外には水分があり、そのまま冷却してしまうと氷の結晶が作られ、細胞を破壊してしまいます。それを予防するため、卵子を専用の凍結液で処理した後シート状の凍結容器にのせ、液体窒素内へ急速に冷却します(ガラス化)。その後-196℃の液体窒素タンクにて保存します。
凍結保存期間
当院での保存期間は、女性の生殖年齢を超えない期間(当院規定:50歳まで)としています。
卵子の凍結保存期間中は1年ごとに保存継続の意思を確認いたします。
卵子凍結のメリット・デメリット
- 凍結した卵子は、液体窒素内で保管することで理論的には半永久的に採卵時の生殖能力を保ったまま保管できます。
- 卵子凍結では成熟卵の段階で凍結を行いますが、受精した胚の凍結保存と比べてまだ難しいところがあり、凍結した卵子が融解後に死滅、変性している場合があります。また凍結した卵子が融解後に生存していても、すべてが移植できる胚になれるわけではありません。そのため、卵子凍結を行う場合は複数個の卵子を凍結することが望ましいとされています。
胚の凍結保存
受精卵(胚)の凍結保存とは
1回の採卵で多数の卵子が採取され、多数の受精卵が発育しても、多胎妊娠を防止するため移植する胚は原則1個と推奨されています(日本産科婦人科学会勧告)。そのため良好な余剰胚(移植していない胚)は凍結保存し、再度妊娠にトライする際には採卵することなく、この凍結した余剰胚を移植することから開始できます。
また採卵した周期には移植せず良好な胚を全て凍結し、別の周期に移植する方法(全胚凍結法)もとられることがあります。これは採卵した周期に移植すると女性に危険が及ぶと判断される場合(卵巣過剰刺激症候群の重症化)や、採卵後のホルモン状態をみて別の周期に移植したほうがよいと判断される場合に行われます。
胚凍結の時期
胚を凍結する時期においては、治療方針によって決定されます。
基本的には初期胚(受精3日目)もしくは胚盤胞(受精5~6日目)での凍結となります。
初期胚(受精3日目)
胚盤胞(受精5~6日目)
凍結方法
胚の凍結は超急速ガラス化法で凍結されます。
胚の細胞内外には水分があり、そのまま冷却してしまうと氷の結晶が作られ、細胞を破壊してしまいます。それを予防するため、胚を専用の凍結液で処理した後シート状の凍結容器にのせ、液体窒素内へ急速に冷却します(ガラス化)。その後-196℃の液体窒素タンクにて保存します。
凍結保存期間
凍結胚は、液体窒素中では理論的には半永久的に保存することが可能ですが、日本産科婦人科学会の見解として「胚の凍結保存期間は、被実施者夫婦の婚姻継続期間であり、かつ卵を採取した母体の生殖年齢を超えないこととする」とされています。そのため当院での保存期間は、女性の生殖年齢を超えない期間(当院規定:50歳まで)としています。
胚の凍結保存期間中は1年ごとに保存継続の意思を確認いたします。
凍結・融解による胚へのダメージ
凍結融解後の胚の生存率は9割以上ですが、凍結・融解の過程で胚が破損したり、変性したり、失われてしまうことがあります。また極めて稀ですが、保存容器の破損や天災等で胚が死滅することがあります。